3min映画祭入選者インタビュー【前半】

昨年 12/15(日)に開催されました首都圏映画サークル連合主催「3min映画祭」では、沢山 のご応募、ご来場をしていただき、誠にありがとうございました! 

この度は会場でも告知しておりました、「3min映画祭」の入選者インタビューを前半・後半に分けて公開させていただきます。
記事の作成に協力していただいた入選者、関係者様のご協力に感謝します。

第二回となった映画祭も昨年に引き続き応募総数 28作品の多彩なラインナップが揃いました。入選作品の選出も大混戦となり、今年は作品の質も一層高くなったように感じます。

今回のインタビューでは、入選者の皆様に5つの質問をさせていただき、作品制作の裏側や技術についてお話を伺いました。映画製作に携わる多くの皆様にとって、今後の作品制作の参考・励みになれば幸いです。
 
前半では 

【第5位】
『偽りの太陽』
徐亦陶監督/映画制作スピカ1895


【第3位(同率)】
『笑い仕掛け』
入江生真監督/成城大学映画研究部


『燦燦』
鈴木志歩監督/成城大学映画研究部


の御三方のインタビューを掲載します。


《徐亦陶監督インタビュー》

1.「今回の作品のテーマを一言で表すなら?」

テーマを一言で表すと『盲信』です。タイトルの『偽りの太陽』は、ミハルコフ監督の『太陽に灼かれて』のフランス版タイトル『Soleil trompeur』からきています。
詳しくは4の質問のところで(笑)


2.「3分以内という募集条件を見た時、又は作品製作時にどう捉えましたか?」

3分映画祭に僕個人が出品するのは初めてだったのですが、過去作品も少し見て、やはり3分という短い時間では、すぱーんと一本軸があればいいかな~と漠然と考えていました。
それが、実際撮影を行い映像化した際の雰囲気の軸になったと思います。


3.「他の学生監督さんの作品制作のヒントになるよう、製作時に使用した主な撮影機材等を教えてもらえたりしないでしょうか?(カメラ、レンズ、編集ソフト等)

カメラはNikon D5500,レンズはシグマやタムロンの単焦点をよく使いますね。特に中望遠。いずれも非常に安いレンズです。
最近は個人向けのカメラ等も急激に性能が上がっていますが、残念ながら僕個人はそんなにいいものは扱えないです、、、
もちろんそういった機材があるに越したことはないし、実際撮影の幅はかなり広がります。ただ、僕自身が90~00年代の映像が好きなのも含めて、そういったちょっと古いものにもそれの味はあります。あとはどう料理するかですね。
ただ、編集ソフトは新しいものを使った方がいいかな、、、?僕はadobe製品を使ってますが、vegasなりda Vinciなりいいソフトはたくさんあるので、いろいろ触って直感に合うのを使うといいですね。


4.「上映中は呆気に取られている人もいれば、笑い転げている人もいたりとリアクションが最も印象的な作品の一つでした。元々は長編の予定だったと伺いましたが、どんな反応を期待して制作されたのでしょうか?」

先ほども言ったように、この映画のテーマは盲信です。もともと長編の構想があり、その内容が、社会主義者、自由意志論者、そして現在主流の新自由主義者がそれぞれの理念の
もとに三つ巴の争いを行うが、その手段は共通して暴力により行われるというブラックコメディだったんですよ。この作品を笑ってみるか真面目にうけとるかというのはかなり
その人のスタンスをあらわしていて、笑ってみてた人は良く言えば冷静、悪く言えば冷笑的な大衆であり、逆にまじめにとらえた人は何かしら自身に思い当たることがあるのではないか、などと邪推してしまいますね笑。
映像は真面目な雰囲気をしているのにやっていることはバカバカしいというギャップからくる笑いだと思うのですが、それはなにしも映画の中の話ではなく、現実にもたくさん見られることです。カルト的新興宗教や反社会的政治団体、または過激派テロ、そういったものの行動に対して、我々は理解できない、ばかげていると考えますが、当の本人たちはいたって真剣なのです。彼らは個人の主張の手段、テロルとして暴力を行使し、そしてその行為を認知しています。そんな彼に対し我々は、なんて野蛮なのだ、文明的な我々は平和を望んでいるのに、どうして理解できないのだ、と考え、彼らが我々を理解できないのならば、法の下に逮捕してしまおう、徹底的に爆撃して、原始時代に戻してやろう、ということが日常的にされています。
しかし、我々の多くは、自身が日常的に行使する暴力を認知していないのです。そこに気づくと、笑えなくなるというホラー映画でして、そういった非難をこめて作ったというのが原点です。


5.「途中でインサートされていた祝賀パレード?の映像や、ポスター、旗、音楽など素材や小道具への意識も目を引きました。これらの準備等はどうされたのか是非伺いたいです」

小道具等は大筋が決まってから、急いで夜なべして作りましたね笑。やはり短編なので非日常の世界観をわかりやすく出すにはそういった小道具は大事になってくると思います。
ただ、パレードの映像もできれば綿密に準備したかったのですが、試験等のためにそうもいかず、一部実際の映像を用いさせていただいております。
6.「Q&A方式だけじゃ伝えきれない部分が多いと思います。ここはどうぞ好きなように言いたいことを言ってください!!」
映像には個人的にこだわりがあるので、そこを今回何人もの人に評価していただけてとてもうれしく思っております。
映画は総合芸術であり、何をどう表現するかも自由ですので、そういった自由なイマジネーションでこれからも多くの人と映画にかかわっていけたらなと思います。




《入江生真監督インタビュー》

1.「今回の作品のテーマを一言で表すなら?」

無意識化の操作です。


2.「3分以内という募集条件を見た時、又は作品製作時にどう捉えましたか?」

3分という尺は日常を切り取るというよりは、一つのテーマを少し不思議な世界で表現した方が効果的なのではないかと思いました。また、作品全体を妥協なく製作するのに3分は非常に適してるかなと、実際製ってみて感じました。


3.「他の学生監督さんの作品制作のヒントになるよう、製作時に使用した主な撮影機材等を教えてもらえたりしないでしょうか?(カメラ、レンズ、編集ソフト等)」

 カメラは部にあるgh5を使いました。レンズはパナソニックのf2.8通しの標準ズーム、25mm/f1.4、フォクトレンダーの10.5mm/0.95の三本だった気がします。編集ソフトはプレミアを使用しました。ちなみにマイクはソニーのecm678で録りました。いいマイクだったんですけど、最近後輩が壊しまして…。もうね、ほんと機材は大切にという(笑)話逸れてしまいましたが、機材でこだわった点はレンズです。例えば、2カット目の足と笑う男を写したショットは10.5mm(フルサイズ換算で21mm)の超広角レンズを使わなければ成り立たないと考えています。遠近感を利用し、足を大きく男を小さく見せることにより、語りや動きなくして関係性を示しましたと思います。また、超広角レンズの利点として奥にいる男もボケすぎずに写せましたし。
後はラストショットとかでしょうか。足に施されたスマイルマークから砂嵐が流れているテレビへとカメラを落としたのですが、それにはカメラの首をリールで上下できる比較的安価な三脚を使いました。カメラを落とすとき、ややブレてしまったのですがgh5と純正ズームの手振れ欲しいが効いていい感じに仕上がりました。


 4.「撮影、特に照明技術が白眉の作品でした。どこかのステージのような舞台も気になります。どのように撮影が行われたのか是非伺いたいです。」

テーマが関わってくるのですが、それについては後の質問で答えるとして。とりあえず、この作品はテーマの性質的に劇場を舞台にすることが大前提でした。撮影場所は大学内にある大教室です。しかし、教室といっても普段授業は行われず、主に演劇部などが公演を行う、ステージ付き小ホールといえるものでした。
 そこでは照明をつれたので、スポットライトを2つ使って演劇感を強めました。演劇用の照明を作る際には、演劇部の友人達(笑い男役の鎗田君も)や照明局長達が相談に乗ってくれました。照明局さんには実際に照明も取り付けて頂きました。丁寧に仕事をこなしてくれて本当に助かりました。この人たち無くしてこの映画はありえません。
 また、録音は基本通りでしたが、横打ち引きのショットでは、ガンマイクを被写体と反対方向に向け、あえて反響する音を録りました。録音を担当してくれた鈴木さんのアイデアなのですが、功を成していましたと思います。(ちなみに同率3位「燦燦」監督の鈴木志歩が録音担当してくれました)


5.「エンドクレジットがメッセージありげなSF映画のそれっぽかったです。作品も何か意味深なものに観えたのですが、あれには一体どんなメッセージが込められていたのでしょうか?」

 エンドクレジットは観客への警告を込めて黄色で淡々としたものにしました。この作品はマスコミとその放送をノーフィルターで鵜呑みにする視聴者への警告なのです。


6.「Q&A方式だけじゃ伝えきれない部分が多いと思います。ここはどうぞ好きなように言いたいことを言ってください!!」
 
 そろそろ質問に答える気力が少なくなり、というか、自分の文章力の低さに悲しくなってきたので、以下撮影グルのノートに書いていたものをそのまま載せます。許してください。
 テレビをみている男は、そのテレビ画面が砂嵐(つまらなくどうでもいい番組、ワイドショーとか特番などの表象)であるのに、テレビ上の足のスマイルマーク(記号)で笑ってしまう。男は台本通りの(つまり劇、お芝居)もので笑わされているのに気付かず、自分が笑っているのだと思っている。その感情は特定の誰か達によって操作されているとは知らずに。
笑いというのは、笑うものが笑われる対象よりも(少なくともその瞬間は)上位であり、余裕でいる時起こるものだと僕は思っています。制度化された現代社会では、男のように安心してぼーっと情報を受けていると、無意識のうちに利用されたりしてしまうと思います。それへの警告がこの作品のテーマです。




《鈴木志歩監督インタビュー》

1.「今回の作品のテーマを一言で表すなら?」

色彩です


2.「3分以内という募集条件を見た時、又は作品製作時にどう捉えましたか?

今回の撮影では3分ということをあまり意識せずに、作品に必要な素材と、自分が撮りたいと思う瞬間を沢山撮って、3分に凝縮させました。
時間は規程なので無視できませんが、あまり囚われずに撮影できたからこそ満足のいく作品になったと思います。


3.「他の学生監督さんの作品制作のヒントになるよう、製作時に使用した主な撮影機材等を教えてもらえたりしないでしょうか?(カメラ、レンズ、編集ソフト等)」

カメラ:SONYα7ⅱ
レンズ:20mmf2.8・50mmf1.4・70-210mmf4
マイク: SONY ecm678
レコーダー:ZOOM h6
照明:LEDライト2灯
編集ソフト:premier pro


4.「とにかく美しい映像が印象的な作品でした。中でも劇中の子供が描いている現代アートチックな絵の存在が目を引きます。あの絵は一体どんな意味があるのでしょうか?」

「雨の日に子供が部屋でお絵描きをする」という場面を想像した時に、太陽がまず浮かびました。雨の中で燦燦と輝く太陽を描くのは晴れへの期待や願望を感じますし、それと同時に雨という現実に対しての物悲しさやちょっとした切なさを感じます。
雨が好きな人がいれば、晴れが好きな人もいて、そういう様々な感情とそれを反映するような色が可視化されて混ざりあっていくのを表現できていればいいなと思います。
あとは私が初めて撮った作品も天気を意識したものだったので、純粋に好きなモチーフなのかもしれません。
太陽は誰にとっても大体の形や色で検討のつくものですし、そのものにインパクトがあります。雨と太陽という分かり易さが、より映像を際立たせてくれるのではないかという狙いもありました。
絵自体を綺麗に映せたのは、照明を上手に活かせたのが大きいと思います。


5.「子供は同率三位の入江生真監督の弟だと聞いて驚きました。そこら辺の関係性であったりの撮影の背景を是非伺いたいです」

初め撮影をする予定は無かったのですが、元々入っていた別の撮影が無くなったので、これはチャンスだと思い撮影する事に決めました。
そこで声を掛けた入江監督に弟がいることを知っていたので、お願いしてみました。詳しくは覚えていないのですが、何気ない会話の成り行きで決まりました。
時間も少なく、少人数での撮影でしたが、とても楽しかったです。


6.「Q&A方式だけじゃ伝えきれない部分が多いと思います。ここはどうぞ好きなように言いたいことを言ってください!!」

今回の撮影はキャスト以外何も決めずに集まり、その場で内容を決めました。1番初めに決めたのは白いシーツで部屋を覆う事です。
その日にその場にある物で世界観を作るのには限界があるので、いっそのこと無の状態を作り、そこに必要な物を足していこうと考えました。『燦燦』の色彩の印象の強さは、周りの情報の少なさがポイントになっていると思います。部屋も衣装も小道具も必要最低限にし、白で統一したからこそ際立たせることができました。
特に映像を魅せる作品では、何を1番魅力的にしたいのか、どのような世界観にしたいのかをはっきりさせて伝える事が重要になってくると考えているので、その為に要らない情報を削ぎ落として必要な物だけを残す事で洗練されるのではないかと思います。
作品を作っていく中で沢山の事を考えていくと、伝えたい事がどうしても増えていきがちで、シーンや会話などの要素を補足してしまうのですが、3分の中で伝えたい事全てを分かってもらうのはとても難しいことだと思います。
1人1人が経験と思想を通して作品を観て、どのように受け取ったのか、何を考えたのか、そういう反応が返ってくるような作品を作っていきたいです。なので、その解釈の隙間を丁寧に作れるようにしていきたいと思っています。
今回の作品で言えば、雨の音がその隙間になるかと思います。雨の音がはっきりと聞こえているのに、他の外の音は聞こえないという状況は自然と「何もない」ことを思わせます。
非日常的な音は違和感にもなりますが、物語性を持ちます。窓の外を写していない状態で窓の外を想像させると、部屋の中の状況をより深く解釈させる足がかりになるのではないかと思い、強弱をつけて意識が向くように雨音を入れました。
そして最後に外を写すことで閉鎖された空間から奥行きが出て、音の答え合わせと同時に、次は写らなくなった子供の存在の不思議さに意識が向かうようにしました。
情報の取捨選択を狙い通りにすることは難しいのですが、写さない描写が作品冒頭の期待や、終わった後の余韻に繋がっていれば嬉しいです。

        徐亦陶監督
       入江生真監督
       鈴木志歩監督

首都圏映画サークル連合

2014年9月5日発足の団体です。 2015年9月1日現在、21の映画研究部、映画研究会、映画サークルが所属しています。 運営はすべて学生が行い、首都圏映画サークル連合運営員会が、その中心を担っています。 学生映画の質・知名度の向上、各団体の繋がり強化のため、合同上映会や合同制作を行っています。