3min映画祭入選者インタビュー【後半】
後半では
【新人賞】
『それでも生きんとす』
森龍介監督/映画制作スピカ1895
【第2位】
『渋谷フルハイビジョン』
前川篤史監督/映画制作スピカ1895
【グランプリ】
『たいまで逃げる。』
Wutisirirattannachai Tassapak監督/創価大学映画研究会
の御三方のインタビューを掲載しております。
《森龍介監督インタビュー》
1.「今回の作品のテーマを一言で表すなら?」
猫から見た世界
2.「3分以内という募集条件を見た時、又は作品製作時にどう捉えましたか?」
昨春〜夏に尺が25分の作品を撮ってずいぶん疲れてしまい、短い尺で気楽に映画を撮りたいと思っていたところで、ちょうど今回の3分映画祭の存在を知ったこともあり、これは挑戦してみるしかないと好機に捉えました。とはいえ、撮影を応募締め切り1週間前から始めるという無計画な体たらくでしたが 笑
3.「他の学生監督さんの作品制作のヒントになるよう、製作時に使用した主な撮影機材等を教えてもらえたりしないでしょうか?(カメラ、レンズ、編集ソフト等)
僕はsonyのalpha7r2という自前の一眼カメラを使って撮影しました。レンズはsamyang f2.8 35mmのみです。あとこの映画の撮影に欠かせなかったのが、スタビライザーですね。これなしではあのような低い視点からブレない映像を撮ることは不可能でした。編集ソフトはadobeのpremiereです。
4.「猫のPOVという斬新な映像が印象的な作品でした。それを成立させるためにカメラワークや映像の質感において工夫があったと思うのですが、何か秘密があれば教えていただきたいです」
カメラワークの工夫はスタビライザーを逆向きに使用することで可能になったローアングルでの撮影ですかね。映像はlog撮影で撮って、後でprofileを加えてオールドチックな質感に仕上げました。オールドチックにしたかったのは最近ゴダール中期の作品を観て少々異なる形でオマージュしてみたくなったからです。それ以上の理由は特にないです 笑
5.「『それでも生きんとす』というタイトルのインパクトが一際目を引きました。主人公のバックグラウンドはぼんやりと描かれていましたが、「それ」とは一体なんなのでしょうか?設定について明かせる範囲で伺いたいです」
お客さんの想像に任せたいというのが本心ですが、一応僕の意図は、それ=社会的な抑圧を受けている状態、でした。これをヒントにして見てもらうとまた違った、より抽象的なメッセージが浮かび上がってくるのではないかと思います。
6.「Q&A方式だけじゃ伝えきれない部分が多いと思います。ここはどうぞ好きなように言いたいことを言ってください!!」
以下はネタバレなので、映画を見た人だけ読んでください。僕がこの映画で描きたかったのは、社会的抑圧への反発です。猫というのは社会的弱者を象徴する記号に過ぎず、ローアングルカットもその意図で撮られています。現生の人間界の裏側とも言えるラブホ街を歩かせたり、落胆した人間を映像に取り入れたのも、世知辛さを喚起するためで、でも優しくしてくれるのは仕事のない社会的弱者という世の理不尽さを表現しようとしました。その中で社会的抑圧に抵抗しようとする猫も、最後は死という形で社会的圧力に屈する構図も、世の中のリアリティとして取り入れました。長くなってしまってすいません。ここらでやめておきます 笑
《前川篤史監督インタビュー》
1.「今回の作品のテーマを一言で表すなら?」
「チョベリバ」です
2.「3分以内という募集条件を見た時、又は作品製作時にどう捉えましたか?」
丁度音楽作ってくれた中尾功俊と「MV作りたいね」って話をしてたので、良い塩梅の尺ではないかと思いました。
3.「他の学生監督さんの作品制作のヒントになるよう、製作時に使用した主な撮影機材等を教えてもらえたりしないでしょうか?(カメラ、レンズ、編集ソフト等)」
Panasonic DC-GH5(カメラ)
OLYMPUS 12-40 f2.8+Panasonic 100-300 f4-5.6 (レンズ)
Zhyun Crane V2 (電動スタビライザー)
三脚はHelinというメーカーのものです。
街中だったので照明は炊きませんでした。
機材以上にメイクさんが良い仕事をしてくれました。あと女優さんも。
編集はAdobe PremiereProですが、エフェクトを普段より多めに使う分パソコンのスペックが必要だったので、友達の家の32GB積んでて結構スペック高いのを使わせて貰いました。
4.「撮影のクオリティが特段に高い作品でした。ロケ撮影というだけで臆する人も多い中、あの渋谷の人混みの中でこれだけのものを撮るには経験と計算が必要だと思います。ロケ撮影について是非アドバイスをご教授いただきたいです」
ありがとうございます笑 自分のほか山本さんとかの撮影中心に分かったことなんですけど、マイクブームさえ出さなければ何をしても大丈夫だと思います。マイクブームは出すと結構怒られます。局部の次に怒られるんじゃないですかね。
5.「会場でのインタビューでは電気グルーヴのMVから影響を受けていると伺いました。個人的には同じ90年代に活躍した渋谷系音楽のMVも幾つか浮かんだのですが、どのような点から影響を受けたのか詳しくお聞きしたいです」
電気グルーヴの中でも『少年ヤング』という曲のMVの影響を強く受けています。わざと映像を80年代のブラウン管越しの映像風に加工するという手法を初めて観た作品です。マネキンのアイデアはWinkの『愛が止まらない』のMVからです。
vaporwave(ヴェイパーウェイヴ)という映像ジャンルの影響も大きいです。vaporwaveというのは(定義が曖昧ですが)元々はサンプリング音楽のジャンルで、あたかもカセットテープから聴こえてきそうな、どこか郷愁を誘うサウンドが特徴です。
そんなvaporwaveを映像に当てはめると、映像をサンプリングする(既存の映像の切り貼り)という事になります。僕が見てきた限りではバブル期〜90年代前半くらいの素材が使われていることが多いです。なので『渋谷FHD』もそれに合わせて90年代風の映像加工をしています。
今回の作品、突然ハチ公のクローズアップが映されたり、急に思い出したかのように社会風刺めいたテロップを入れたり、しまいには民放批判(「CMの後もまだまだ続くよ」のテロップが出たら、続かない)をしたりと、意味がわからないですよね。
実際、意味はありません。現にメディアで出回っているvaporwave作品も、切り貼りした映像と映像には何の脈絡もありません。vaporwave音楽の歌詞って、無意味な言葉の羅列だったりするんです。でも意味が無いからこそ独特の浮遊感・トリップ感があります。そういうグルーヴを映像で表現したかったんですよね。
『渋谷FHD』は元々のストーリーは「現代の渋谷にタイムトラベルしてきたバブル期の女が彼女なりに順応していく」ですが、今思えば「無意味で脈絡のない切り貼り映像世界に迷い込んだ女」という解釈でもいいかもしれません。
渋谷系はどっぷりではないけど僕も好きです。専門家じゃないのであれですけど、渋谷系特有の軽さが好きなんですよね。MVはあんま見た事ないけどカヒミカリィあたりでしょうか?その話よかったら詳しく聞かせてもらってもいいですか?
6.「Q&A方式だけじゃ伝えきれない部分が多いと思います。ここはどうぞ好きなように言いたいことを言ってください!!」
MVとは限りませんがこれからも音楽と密接に関わる映像作りをしたいと思っています。
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《Wutisirirattannachai Tassapak監督インタビュー》
こんにちは、創価大学映画研究会のファーストと申します。タイから来ました。このインタビュー読みながらViolette WautierのHabits (Stay High)を聞くと楽しくなるじゃないかなと思います。(監督より)
1.「今回の作品のテーマを一言で表すなら?」
この作品では最初に「大麻でタイまで逃げる」というテーマから考えて来ました。
2.「3分以内という募集条件を見た時、又は作品製作時にどう捉えましたか?」
約40分〜1時間尺の長編映画の脚本を書くのは、私には非常に困難でした。通常、ストーリーが頭に浮かんだとき、それは映画のテーマ、始まり、クライマックス、そして終わりのみにすぎません。 ストーリーを紡ぐため映画の中核には何を置けばよいかわからないのです。
でも、たった3分で終われば、ストーリーは入れるだけで十分です。今回は2分と59秒で作ってみようと思ったので、つまりこの話はまだ終わっていません(事実、ただ面白いです)。 また昨年、他の人の作品を観たことが、この3分間で見せたすべてが意味をなさないといけない、一方で見せたくない部分を切り取っていくことは簡単にできるのではと私に考えさせてくれました。
3.「他の学生監督さんの作品制作のヒントになるよう、製作時に使用した主な撮影機材等を教えてもらえたりしないでしょうか?(カメラ、レンズ、編集ソフト等)
この作品使ったカメラはIphone10s とRicoh GR3(動画撮りはおすすめしません、めっちゃ悪いです。コンパクトカメラなんでレンズは変えないです笑)またはピンマイクと編集ソフトはadobe premier pro使ってます
4.「多彩なエフェクト等から多くの人がその編集技術に驚かれたのではないかと思います。あのような編集はどのように学ばれたのか伺いたいです。タイの現地映像も気になりました」
自分ではまず、こいうエフェクト入れたいな、YOUTUBEを探して見て、フリー素材と合わせて作りました。タイの現地映像の部分は元々綺麗なんでそんなに編集してなかったです、気になったらタイで撮影しに来てくださいね。
5.「メッセージ性も感じられつつ、しかし、面白く伝えることを何よりも大切に作られた作品だとも思いました。留学生としてのご自身の境遇をここまで客観視して作品に結びつけるのはなかなか出来ることじゃ無いと思います。観客の皆さんの反応を受けて監督はどのように受け取りましたか?」
やっぱり自分思うより反応がたくさん来ました。もちろんメッセージ伝えたいのは考えてましたけどただ自分がただ楽しく編集しながら作ってた映画なんで、みんなが受け取りてくれてありがとうございます。観客の皆さんの反応というなら半分が「大麻もすきです!やってみたいですね」感じたんで、「まー大麻好きのは喜びますが日本で使うのはダメですよ」と言いたいです。
6.「Q&A方式だけじゃ伝えきれない部分が多いと思います。ここはどうぞ好きなように言いたいことを言ってください!!」
今、コロナのせいで日本に入国できなくて、タイでこの「たいまで逃げる」インタビューを書いて、皮肉だなって思います。コロナ気をつけてください。
まず、この作品は自分の大学部活が売れなくて、アイデアとか出した時はあまり受け取れなかったのでちょっと悩んでたです笑。この映画祭でみんなから受け取ってくれて、今までも感動しています。また映画祭で色んなMINORITYな映画というか、資本主義は気にしなく自分が作りたいから作った映画がたくさん見られて楽しかったです。また楽しみしています。
そして、この国大麻リーガライズ希望しています。大麻というものは日本のプロパガンダアプシュ強すぎません?自分が大麻得意じゃないけど、ちょっと興味増えてきた。この作品作ってる時には「違法だからダメ」という友達の声からたくさん来たので「なんで違法品なの?」といういつも考えてます。この世界は「違法だからダメ」というものが多いと思うのでみんなさんも「なんで違法品なの?」という質問してほしいです。最後まで変な日本読んでくれてありがとうございます。いつかみんなさんと たいま で逃げれるのを楽しみしてます。
以上が今回のインタビューでした。
改めて監督の皆様のご協力に感謝致します。
森龍介監督
前川篤史監督
Wutisirirattannachai Tassapak監督
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