【交代挨拶】新副代表 山本航平

 新しく副代表を務める映画制作スピカ3年の山本航平です。

 昨年のシネマターミナル(連合主催の合同上映会)では、実行責任者として、次のような話をさせていただきました(イベント前日のメモにも、同じ文面が残っていました)。

―――学生映画に携わる者同士が、互いに作品を鑑賞・批評しあう場、そこから新しい作品が生まれていく場所を作り、首都圏全体に広げていくことが、シネマターミナル、ひいては連合の意義です―――

 当たりさわりのない、悪くいえば毒にも薬にもならないような挨拶だったと後悔したのを覚えています。作り手同士がお互いの作品を観て、それについて語り合い、示唆や刺激を得ることの重要性は、わかりきったことだともいえます。では、そのような活動が行われる「場」とは何でしょうか。

 連合は、特定の拠点をもっていません。シネマターミナルも、月に一度の委員会議も、場所を転々としながら、いろいろな大学の施設を借りて行っています。そこにたえず人が出入りし、なにげない会話や議論が交わされている密度の濃い空間、そこにいけば知人に会って話ができる部室のような場所が、連合にはないのです。このことは、連合にとって決して無視できない弱みであり、連合という組織、その運営母体としての委員会が、どこか曖昧な存在になってしまっている一つの原因だと思います。自分のサークルが連合に所属していることは知っているが、結局何をする団体なのかがよくわからない、あるいはそもそも関心がない、という方が大半ではないでしょうか。

 学生映画を盛り上げたい、あるいは、同世代の監督が活躍している現状にあって、それに何らかの仕方で対抗し、既存の枠組みの外側から働きかける別の運動を作りたい、と漠然と考えている学生は少なからずいます。連合の理念とも重なるそのような試みを実際に進めていくには、結局陳腐な結論に行きついてしまうのですが、まずはその担い手となる人間が集まる場所、そこで映画談義に花を咲かせたり、自分たちの映画の構想を話し合ったりするような、具体的な場所が必要であり、それを見さだめ、維持し、そのつど広げていくことに、副代表として取り組みたいと考えています。

 一つには、これもまた陳腐な発想ではありますが、所属団体の大学の施設を継続的に使用していく、ということがあります。もちろん、まずは運営予算の都合があり、教室申請の際には各団体の担当者の方に負担をかけていることは事実です。年度によって、これまで利用していた施設が使えなくなることもあります。それでも、「去年〇〇が上映されたこの会場で自分の作品が上映される」「OBの△△監督が登壇したことのあるこのホールに自分が登壇する」といった(些細なものであっても)蓄積が生まれていくことには、ただ組織やイベントが続いていくこと以上の重みがあるのではないでしょうか。シネマターミナルや3min映画祭などのイベントの折に、首都圏全体の学生があるときにはA大学に集まり、またあるときにはB大学に集まり、大学近くの居酒屋でもそのイベントの続きが深夜まで行われる、という一見地味な活動の積み重ねが、ある傑出した作品が生まれるなど目に見える成果につながるのだと確信しています。

 先ほど「運動」という言葉を使いましたが、それにはどこか安直な響きがあるかもしれません。しかし、私は(たとえば大規模や長編映画を合同制作する、全国規模の映画祭を開催するなど)大文字の運動ではなく、むしろ、複数でバラバラの運動が広がっていく流れを想定しています。(これまで繰り返し述べてきたような)活動拠点としての場所は、複数あってよく、そして複数あるべきです。現在私は、連合内でのサークルの垣根を超えた映画制作の一つのモデルが作れないかと考え、委員としてでなく連合の一メンバーとして、複数団体での合同制作を進めているところです。それでも、私自身の力不足もあって、委員会を中心としたコミュニティにとどまってしまいます。そのような横断的な活動は、委員会の外からも、委員の想像力を上回るような仕方で、生まれてこなければならない。「自分のサークルでは機材やスタッフが足りないから他団体の力を借りたい」「演技経験を積むために他大の撮影に参加したい」という声を、実際に何度も耳にするからです。

 鈴江と私がするべきは、その環境、多少しつこい言い方をすれば、様々な横断的な試みがなされうるような場を作り、整えることです。連合は、まだまだ歴史も浅く、なにより知名度がありません。自主映画と商業映画の境目がなくなりつつある昨今で、おいてけぼりにされているのが現状です。しかしそれは、既存の秩序・権威にとらわれず、自由で実験的な試みがいくらでもできるということでもあります。先日行われた「3min映画祭」で上映された作品群の質、トークセッションで登壇者がかわした対話の密度をみれば明らかです。私たち二人には、この一年間でやりたいことがたくさんあります(もちろん実現できることはごく限られています)。連合に対する関わり方は色々です。委員に限らず、委員会の外で連合を盛り上げてくれている方の力に大いに頼り、連合に関心がない方を少しずつ巻きこみながら、継続するべきことは継続しつつも、新しい種を蒔いていければと考えています。

 皆さまには(特に各団体の渉外担当の方には)ご迷惑をかけることも多々あることと思いますが、何卒よろしくお願いいたします。


山本航平

首都圏映画サークル連合

2014年9月5日発足の団体です。 2015年9月1日現在、21の映画研究部、映画研究会、映画サークルが所属しています。 運営はすべて学生が行い、首都圏映画サークル連合運営員会が、その中心を担っています。 学生映画の質・知名度の向上、各団体の繋がり強化のため、合同上映会や合同制作を行っています。